[東京神田] 皀角坂

1987
皀角坂
御茶ノ水駅前の交番脇の石碑を見て,交番の脇の道を入る。
この道は楓の並木道になっているのでカエデ通りと呼ばれている。カエデ通りは神田川と並行しているが,ビルが続いていて川は見えない。
やがて道の右側を塞いでいたこのビルの列が切れて,神田川と川に並行して走る中央線総武線がのレールが見え始める頃急な下り坂となる。
これが皀角坂[サイカチ坂]である。
坂をおりてゆけば水道橋駅の東口に至る。
サイカチ坂の名称はサイカチという木に由来する。
サイカチはマメ科の落葉樹関東地方では昔からよく見かける木であった。
この坂にもかつてサイカチの木が何本もあったようだ。ところが明治時代末期にはすでにさいかちは一本もなかったようだ。
そしてその後に針葉樹のカエデを道の両側に並べたから,そのままであればやがてサイカチ坂の名称は消えたかもしれない。
しかし古来から伝わる魚名前に縁のある木が一本もないのではまずいと考えたのか,昭和35年に千代田区役所がこの坂に三本のサイカチを植えた。その三本並んだサイカチは見事に成長して,夏と夏ともなれば大きく枝葉を伸ばしている。
交番の裏には洒落た喫茶店などもあるが,この道この道の特徴は学校や医療関連の建物が多いことだ。
ざっとあげてみても
池坊学園
服部学園
アテネ・フランセ
東京写真専門学校
東京デザイナー学院
といった各種の学校があって,高校も国立と私立の2校がある。
全国でも数少ない国立の高校は
東京芸術大学音楽部附属音楽高校
と言って,建物は昭和2年にできたものである。校庭のヒマラヤスギが立派である。
この高校は国立ゆえ,政府の意向によって財政再建のため売りに出されているそうだ。
私立の方は東洋商業高校である。
アテネ・フランセの他に文化学院,主婦の友文化センター,駿河台アカデミー学園,などがあって,文化の香りが高いマロニエ通り。そのマロニエ通りとサイカチ坂の合流点でいよいよサイカチの木と出会う。
この合流地点はちょうど神田川の展望も開ける地点なので見晴らし台のように小さい公園があり,石のベンチが二つ置いてある。
そこに腰掛けて対岸を眺めれば,
水道橋駅に向かう電車・来る電車,
川の斜面の緑の濃い樹木,
本郷の元町公園,
都立工芸高校,
その左手前の後楽園遊園地
までぐるっと見渡せる。
東京路上細見一,林順信著

Jmxlknl pc







1987
サイカチ坂から水道橋を見下ろす
まだ御茶ノ水に鉄道が通っていなかった頃の駿河台さいかち皀角坂[さいかちざか]の風景。
絵の左にはサイカチの巨木が立ち並んでいるが,中央線の前身である甲武鉄道が敷設されると,これほどの崖もサイカチも姿を消してしまう。
神田川の手前にかかっているのは橋ではなく江戸時代の上水の懸樋。
遠くに見える水道橋の手前右側は,高松藩主松平邸跡。
その向こう,煙突の見えているところが旧水戸藩水戸藩邸跡・陸軍の砲兵工場。
関東大震災で工場は全焼して,その後は後楽園スタジアムなどになっている。
自御茶ノ水小石川之遠景,勝山英三郎画

jmtjn6wm pc