[海外香港] 九龍城砦〜映画『トワイライト・ウォリアーズ/九龍城寨之圍城 』レビュー(25.3)





 [レビュー] 『トワイライト・ウォリアー/九龍城寨之圍城 』(25.3)〜滅ぶスラムの郷愁とド級アクション
TOHOシネマズ上野
🕐25.3.23   
『トワイライト・ウォリアー/九龍城寨之圍城 』
日曜18:40〜。11F第8スクリーン(轟音スクリーン)。ディズニーの人気タイトル『ウィキッド』と被ってる割りには客入りは7割で入っていた。年齢層的には若年層9割。予習で観たYoutubeで「女性客多い」ってあったが,実際に客席眺めると,カップル多いのは当然として,お一人様女子は結構いた。「ストレス溜まってる」とか「ゲーム世代」とか分析は色々あるとは思う。
かつて香港にあった,「東洋の魔窟」と呼ばれた巨大な立体スラム・九龍城砦を舞台としたアクション大活劇。香港版マッドマックス(宇多丸氏評)。原作は余兒著『九龍城寨』。龍捲風役のルイス・クーはブルース・リーの弟子であり,廃れてしまった香港カンフー映画のオマージュでもある。香港に流れ着いた不法難民チャン・ロッグワン(陳洛軍),九龍のボス,ロン・ギュンフォン(龍捲風)を軸にしてストーリーは進む。
九龍城はもはや存在しないんだから,セットとCGの組み合わせだろうが,監督が九龍城育ちのソイ・チェン,スタッフも香港人というだけあって,作り込みがアツい。アクション監督の谷垣健治は香港カンフーで育ったという意味で,香港カンフーに熱い思いがある。CGも最近のCGは重量感があって,あまり実写と比較する気にはならない。『インディ・ジョーンズ』のハリウッドCGは驚愕のレベルだったが,この九龍城塞の再現度も素晴らしいものだ。
九龍城塞っていうのは遠目には高層ビルに見えるんだが,要はブリキや木造の一戸建てを縦に横にひたすら積んだだけの構造で,そういう建築法を無視した構造物が成り立っていた背景は,清王朝以降の敷地で,中国にもイギリスにも属さない治外圏であったからという事らしい。異国の過去のノスタルジーって,何だかピンとは来ないが,九龍城で生きた,九龍城同じ時代に生きた香港人の,熱情というようなものがセットにもCGのディテールにも表れていた。
アクションの方は,最近多いワイヤーアクションで,コミックの世界をまんま映像化する凄さ。あと面白いと思ったのが,年寄りが異常に強い。ブルース・リーの弟子のルイス・クーが強いのは分かるが,マフィアの黒幕の大ボスも,いざ戦うと若いヤツの数倍の威力を持ってる。こういう発想って日本やアメリカの映画ではそもそも存在しない。香港映画はそうなのか。あと荻野目洋子,吉川晃司の歌や日本製ガジェット等,随所に出てくる日本製カルチャーは,日本人向けというよりは80年代香港の再現という意味だと解した。イヤ〜面白かった〜〜♪

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香港映画史上歴代NO.1大ヒット!
世界が熱狂!香港映画史に新たな歴史を刻む話題作!
第97回アカデミー賞® 国際長編映画賞の香港代表に選出され、第77回カンヌ国際映画祭での初上映から熱狂的な拍手を浴びた本作。香港公開後も話題が広がり続け、ついには香港映画として歴代No.1の動員を達成した。
✔九龍城砦がスクリーンに蘇る!
舞台は伝説の「九龍城砦」——無法地帯として知られ、今は失われたその場所が、圧倒的なスケールでスクリーンに蘇る。ルイス・クー、サモ・ハンといった香港映画界のレジェンドから若手実力派までが集結し、壮絶なアクションで観客を圧倒する。そして、約10億円を投じて精密に再現された九龍城砦のセットは圧巻。息を呑むスケールと細部へのこだわりが、観る者の心を鷲掴みにする。
✔ストーリー
九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)――かつて無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた。80年代、香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑む――。

クロックワークス
https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/




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「トニー・ジャーのアクションの真髄が『トワイライト~』で継承、昇華されていると思うと感慨深いですね。」ドラゴン×マッハ! 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
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矢萩久登
5.0泣ける 楽しい 興奮
2025年3月22日鑑賞 映画館で鑑賞
2025年3月23日投稿
トニー・ジャーのアクションの真髄が『トワイライト~』で継承、昇華されていると思うと感慨深いですね。
現時点で圧倒的に本年度NO.1 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(2024)。
再び香港クンフーアクションに魅了される今日この頃ですが、『トワイライト~』を鑑賞するとタイのエクストリームなアクションにも影響されていると感じておりましたが、遡ること10年前にソイ・チェン監督はタイの巨星トニー・ジャーを香港に召喚、香港のアクションスター・ウー・ジンとタッグを組ませ本作『ドラゴン×マッハ!』(原題:殺破狼2/2015年)を監督していましたね。
本日は実にタイムリーな上映をしている新文芸坐さんにて鑑賞。ストーリーは香港とタイを股に掛け、タイの刑務所で行われる臓器密売組織の壊滅を諮る潜入捜査官チーキット(演:ウー・ジン)と刑務所の看守チャイ(演:トニー・ジャー)の対立から芽生える漢の友情を中軸にクンフーとムエタイベースの肘と膝、そして沢村忠氏を彷彿とさせる真空飛び膝蹴りを駆使したタイアクションの血沸き肉躍る見事なコンビネーションが最大の見どころ。特に絶望的に無双な刑務所所長(演:マックス・チェン)との2対1のラストバトルは思わず観劇中に拍手喝采してしまうほど傑出していましたね。
『トワイライト~』では颯爽と九龍城砦で理髪店を営む九龍城砦のリーダーを演じたルイス・クーが本作ではかなりウエイトを落として死期迫る密売組織の首領を忌まわしげに好演。またジョニー・トー監督作品の常連サイモン・ヤムもあい変わらずいぶし銀でしたね。演出面も雨の使い方などソイ・チェン監督らしさが垣間見えます。00年代~10年代のアクション映画を牽引したのは疑う余地もなくトニー・ジャーですが、彼のアクションの真髄が『トワイライト~』で継承、昇華されていると思うと感慨深いですね。

映画.com
https://eiga.com/movie/102484/review/04905434/





トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦・・・・・評価額1750円
2025年01月31日 (金) | 編集 |
✔九龍城砦を支配しろ!
かつて香港に存在し、複雑な歴史的経緯からどの国の施政権も及ばなかったために、「東洋の魔窟」と呼ばれた巨大な立体スラム、九龍城砦を舞台としてアクション大活劇。
密入国者の青年が、ひょんなことからこの魔窟に迷い込み、香港中の黒社会を巻き込んだ抗争が勃発する。
漫画脚本家として活動して来た余兒の初の小説「九龍城寨」が原作で、描かれるのは、友情・努力・勝利のジャンプ漫画型熱血アクション。
運命に導かれる様に、九龍にやって来るチャン・ロッグワン(陳洛軍)にレイモンド・ラム。九龍のボス,ロン・ギュンフォン(龍捲風)にルイス・クー,ギャングの大ボスをサモ・ハン、気功を操る怪人ウォンガウにフィリップ・ン、かつてロンと戦って死んだ“殺人王“チャン・ジムをアーロン・クォックが演じる。監督はソイ・チェンが務め、アクション監督を谷垣健治、「イップマン」シリーズの川井憲次が音楽を手がける。3億香港ドル(60億円)の巨費が費やされた香港映画界久々の超大作で、5千万香港ドルをかけて作られた、九龍城砦の巨大なセットの中で巻き起こる、怒涛のアクションが最大の見もの。香港映画史上、歴代一位となる動員数を記録し、すでに三部作となることが発表されている。
✔ストーリー
1980年代。 香港に密入国したチャン・ロッグワン(陳洛軍)(レイモンド・ラム)は、港を牛耳るギャングの大ボス(サモ・ハン)に騙され、金を奪われた。その報復としてギャングの覚醒剤を奪い、九龍城砦に逃げ込む。
数々の勢力が覇権を争った九龍城砦も、竜巻と呼ばれたロン・ギュンフォン(龍捲風)(ルイス・クー)がリーダーとなってからは平和が保たれていて、何者も手を出せない。ロッグワンはロンに仕事を与えられ、ロンの右腕のソンヤッ(信一)(テレンス・ラウ)、医者のセイジャイ(四仔)(ジャーマン・チョン)、サップイ(十二少)(トニー・ウー)ら同世代の若者たちと友情を育み、はじめの居場所を得る。一方、かつての九龍の抗争で、殺人王と呼ばれたチャン・ジム(アーロン・クオック)に妻子を殺されたチョウ(秋)(リッチー・レン)は復讐を遂げるために、チャンの息子を探し続けて来たが、遂にその行方が知れる。彼こそが、チョウの義兄弟でもあるロンの所にいるロッグワンだったのだ・・・・
✔レビュー
めちゃくちゃ面白い。
物語の冒頭で、香港に密入国したロッグワンが、立場の弱い難民から搾取するギャングと揉め、九龍城砦に逃げ込む。この設定自体が九龍の、そして香港の歴史を象徴する。アヘン戦争の結果、イギリスの植民地となった香港は、難民たちが作り上げた都市だった。19世紀後半の太平天国の乱から日中戦争、国共内戦までの100年近くにわたる激動期、香港には大陸各地から難民が流入し続け、猫の額ほどの狭い土地に500万人を超える人々が住むようになった。そして最初は清朝の砦として作られた九龍城砦は、九龍半島がイギリスに割譲された後も、施政権の主がはっきりしなかったことから、食い詰めた最下層の難民たちが住み始め、無計画に増築が続けられた結果、ついには地上12階建の巨大な迷宮の様な立体スラムが出来上がった。内部では黒社会が跋扈し、あらゆる違法行為が行われ、「一度九龍城砦に入ったら、二度と出られない」と言う伝説も生まれた。やがて70年代に入ると、カオスの様な状態に対し住民たちが自警団を作って対抗し、徐々に治安が回復し、九龍城砦は束の間の平和を得る。本作は、この時代を背景としている。
香港映画黄金時代を思わせる、どストレートな少年漫画話型かつご都合主義満載の脚本が最高である(褒めてる)。かつて城砦を支配した黒社会を倒した伝説のボス、ロン・ギュンフォンが庇護する城砦内で、ずっとよそ者として生きて来たロッグワンは、ソンヤッ、セイジャイ、サップイらと友情を結び、はじめての「居場所」を得る。だが、香港返還に伴う城砦の利権を巡る抗争が激しさを増し、そこにロッグワン自身の出生の秘密も絡んでくる。ロンは数十年前の抗争で、義兄弟の契りを交わした三合会のリーダー、チョウとタイガーの二人と共闘、最大の敵であった殺人王チャン・ジムを倒すのだが、チョウは抗争の過程で妻子をチャンに惨殺される。実はジムには行方不明の息子がいて、チョウはずっと探し続けていたのだ。そして彼こそが、ロッグワンだったのである。チョウが復讐のために、我を忘れて付け狙うロッグワンが変数となり、九龍城砦の支配をかけた戦いが再び勃発するという訳だ。上記で分かるように、物語的には「いやいや人間関係全部偶然の産物かよ!いくら何でも出来すぎだろ!」なんだけど、魅力的なキャラと圧倒的な熱量を持つ怒涛のアクションがあれば、娯楽映画なんてこれで良いのだと思わされる。設定は複雑だが劇中での説明要素は最小限で、おそらくこれから三部作の中で語られて行くのだろうが、本作だけでは分からない要素も多い。
ちなみに本作は、米国アカデミー賞の国際映画賞の香港代表に選ばれたが、見事に落選ってそりゃそうだ。脚本強引すぎだもの(笑その分、アクションは凄まじいボリュームだ。最初にロッグワンが城砦に侵入し、自警団に追われるシチュエーションから始まって、複雑怪奇な九龍城砦ダンジョンを縦横無尽に使った立体アクションは、十分に未見性があり、友情・努力・勝利の方程式は自分の中の少年の血を煮えたぎらせる。
気功術を操る敵のウォンガウなんて、硬化の技であらゆる攻撃が無力化されるって、ちょっとチートすぎなんだが、絶対倒せそうもない敵に、仲間たちと挑むカタルシス。谷垣健治の仕事は質・量共に過去最高レベルで、いわばアクションの三段おせちでお腹いっぱい。
そして本作のを特徴付けるのが、過ぎ去った時代へのノスタルジーだ。
私は過去に数回香港を訪れているが、93年にはじめて香港に行った時、ちょうど取り壊しが始まったばかりの九龍城砦を見ることが出来た。
想像よりも規模は小さかったが、全てがギュウギュウに密集し、スチームパンクSFに出てきそうな異様な建物だったのを覚えている。
それから30年間の香港の変化は、凄まじいものがある。九龍城砦はすっかり解体され、公園となった。30年前は狭い平地だけに建物が密集していたが、土地が無くなったのかゼロ年代に入ると山の部分にもタワーマンションが林立し始め、ますます人工的な街になってゆく。そして香港は、一国二制度を50年間は続けるという条件で、97年に中国に変換されたものの、民主主義は早速骨抜きにされて、かつての自由は失われ、今では共産主義中国のありふれた地方都市に成り下がった。
功夫映画で世界に名を轟かせた、香港映画界も大きく変わった。香港返還前にはスター俳優やスタッフの海外流出が続き、大陸資本が津波となって押し寄せた。ゴールデンハーベストとショウブラザーズの二大スタジオも、大陸の資本の傘下に入り、香港独自の映画生態系はほぼ失われた。
本作で大ボスを演じるサモ・ハンは、80年代の香港映画黄金時代を代表する大スターの一人であり、九龍のボスにして咥え煙草の散髪屋、ロンを演じるルイス・クーや監督のソイ・チャン、プロデューサーのウィルソン・イップ、ジョン・チョンもまた栄光の時代とその残滓を知る世代。
彼らが結集した本作は、大陸資本が入っていない、香港だけで作り上げた超大作だ。
様式的な功夫映画とノワール映画をモダナイズしつつ、擬似親子的師弟関係、義兄弟の共闘、因果応報の復讐といった香港映画といえばこれという要素を詰め込み、今は失われた香港の魂の象徴として、香港映画黄金時代の80年代の九龍城砦を舞台に設定する。この映画に結集した老も若きも、彼らは皆かつての香港映画に想いを馳せる浪漫の徒なのである。これはある意味で二度と帰らない街の青春を描いた、アクション満載の香港版「ALWAYS 三丁目の夕日」なのかも知れない。ちょっと気が早いかも知れないけど、間違いなく今年のアクションシーンを代表する作品となるだろう。本作の前の時代を描く「九龍城寨之龍頭」と「九龍城寨之終章」を楽しみに待ちたい。
今回は、ザ・香港映画なので、カクテル「香港フィズ」をチョイス。氷をいれたタンブラーに紹興酒60mlとジンジャーエール120mlを注ぎ、軽くステアする。スライスレモンを縁に飾って完成。紹興酒は単体だと結構好みが分かれるが、カクテルにするとクセがあまり気にならず、飲みやすくなる。ちょうど春節なので、豪華な中華おせちと合わせて飲みたい。

ノラネコの呑んで観るシネマ
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