[徳島阿南] 喫茶・大菩薩峠~増殖しつづける喫茶店

1995





2020






[徳島阿南] 喫茶・大菩薩峠~増殖しつづける喫茶店
男は長い間大菩薩峠の辺りをさまよい歩き,放浪生活を送っていた。ずっと昔のことである。
今男は徳島の阿南という町にいる。海に近い国道沿いに土地を手に入れコーヒーを飲んだり一皿の料理を囲みながら仲間とくつろいだり,制作や展示の場所に困っているアーティストに解放できる空間を作るためにセメントやレンガを買い込んで,男は一人きりで城を築き始め,気が気が付いたら25年あまり経っていた。大菩薩峠と名付けられたその城はまだ完成していない。
畑を耕し資材を運び上げ,出来上がった部分を使って開店している。喫茶店に来る客のために朝からコーヒーを入れ,そしてレンガを積む。男は設計図に従ってこの城を作っているのだろうか?それとも彼の脳内に無限に増殖する設計図があって,それを少しずつ紐解きながら工事を続けているのだろうか?
喫茶店の重い金属製の扉に刻まれた「1971」という数字が訪れる者に様々な想いを呼び起こす。1971年から25年間の歳月が流れ,周囲を見回すとそこら中に建築資材が積まれ,明らかにまだ作業の途中なのである。。もしかしたら男が「城」の完成を花輪で祝う日は永遠に来ないのかもしれない。もしかしたら男は完成を望んでいないのかもしれない。。
永遠に未完成で,だからこそいつ見ても姿を変え,そしていつもその先の空間へと増殖していく.......可能性を秘めた現在の姿こそがこの城には似つかわしく見えるのかもしれない。
唐突に僕は思い出す。南フランスで遭遇したもう一つの偉大な「城」のことを。シュヴァルという名の郵便配達夫が,毎年毎日山を30 km以上歩いて郵便を配達した後石ころを集めて回り,給料をセメント台につぎ込んで,村人たちから狂人扱いされながら33年かかって築き上げたパレ・イデアル(理想境)....20世紀の終わりに僕たちは徳島の地に僕たちのパレ・イデアルを持てたことを誇りに思わなくてはならない(1995年3月)
ー珍日本紀行-西日本編, 都築響一, ちくま文庫

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[徳島] 喫茶・大菩薩峠
#レストラン喫茶
徳島県阿南市にある喫茶店「大菩薩峠」さんです。廃墟ではなくて営業中のcafeです。
建築開始は1966年〜現在も増築中との事です。
日本のサグラダファミリアです。

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