[鉄道][岩手陸前高田] 大船渡線紀行









 

[鉄道][岩手陸前高田] 大船渡線/鹿折唐桑駅
鹿折唐桑駅(大船渡線)
鹿折唐桑駅の震災前後の比較記事はこちらへ
http://air.ap.teacup.com/sahizuka/363.html
鹿折唐桑(ししおりからくわ)のホームの名所案内板には、巨釜半造(おおがまはんぞう)という妙な名前の岬に、大理石でできた折石という岩が突っ立っている光景が絵で描かれていた。三陸海岸沿いの駅の名所案内板には、このような風景画が描かれていることがあるのだが、誰が描いたのだろうか。風雨にさらされて薄くはなっているものの、どことなく味のある絵であると思う。
薄暗い駅舎をくぐって駅前に出てみると、ロータリーの中に、先程絵で見た折石を模した像が聳えていた。そのてっぺん近くからは、2羽のウミネコの模型がぶら下がっている。なかなか手の凝ったものであり、ウミネコが添えられていることによって、像の趣きが増している。
しばらくその像を眺めた後、再び駅舎に入り、中の様子に目をやった。すると、駅舎の待合室の壁に沿って、千冊以上の文庫本や童話などが所狭しと本棚に並んでいた。「駅文庫」などと称して駅に書籍が置かれているのは他の駅でもわりと目にする光景なのだが、ここまでの数を備えた駅は初めなので思わずびっくりする。その本棚の前では、どういうわけか、初老の男性が長机を寄せて、熱心にマジックで何か紙に書いていた。
彼の仕事が一段落したので、話しかけてみる。
男性はSさんといって、この駅の管理をしてきたのだという。子供たちのために駅文庫を維持してきたが、最近この駅が無人化されたのに伴って、当局からの指示により、明日限りで本を駅舎内からほとんど撤去しなければならず、それで、「駅文庫さよなら」の横断幕を作っていたのだそうだ。Sさんは、これだけの本が駅から撤去されることが残念無念であるらしい。しきりに嘆じている。列車が遅れたときなどには、日ごろ本などに見向きもしない子供たちが、暇つぶしに本に手を伸ばしてページをめくることもあったでしょう、それが無くなるのは残念ですね、などとこちらも同情の意を示す。
と、Sさんは、わが意を得たり、というが如く、子供たちが本と親しむ機会を得る場所が、このような身近な駅に設けられているということは、その地域の文化水準を上げることに寄与するところが多大である、というようなことを列車が来るまで私に向かって熱心に語り続けた。
2011年3月18日作成記事
『防潮堤に防潮水門 それでも・・・』はこちらへ
http://air.ap.teacup.com/sahizuka/319.html
(2006年9月14日)
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鉄道エッセイ砂日塚ノオの駅途中下車
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