[岡山倉敷] ヨシオカヤ百貨店




 [岡山倉敷] ヨシオカヤ百貨店
【ヨシオカヤ百貨店】
ワタクシの生まれ育った倉敷市児島では超有名なデパートである。
誰がなんと言おうと百貨店という名前なのだからデパートなんである。
ヨシオカヤの創業は大正ですが、このビルが建ったのは昭和に入ってから。昭和の一時代を飾った地方のデパートのお話です。
倉敷市児島という町は、今はジーンズで有名だが、元々学生服を筆頭に繊維業の盛んな町である。物が不足し、作ればなんでも売れたという昭和30~40年代にかけては、全国から中学校を卒業したばかりの若者(繊維業という職種のためそのほとんどが女子で、後年聞いた話では、児島の男性一人に女性がトラックの荷台一杯くらいは居たそうで、完全に男の売り手市場。股間にナニがぶら下がっていたら誰でもモテたという噂w)が集団就職でやってきていた。このため町は若い女性で溢れ、商店街は昼でも煌びやかな光に照らされ、子供心にいつもワクワクしていたものである。
この頃、商店街からヨシオカヤへと続く道は、間違いなくお買い物メインストリートであり、ヨシオカヤは周囲の低い建物に比べ4階建て+屋上に小型の観覧車まで備える遊園地があるという、それはそれはとても立派にそびえ立つビルディングであったので、少し離れた位置から見えることはもちろん、屋上からの眺望は街一帯を望むことができるという、児島の住民には超イケてる建物で、例えば女の子の誕生日プレゼントを買うなら、ヨシオカヤの中にあるサンリオの「キキ☆とララ☆」のお店に行けば間違いないし、とにかくちょっと高級な感じの物はここに行けばなんでも揃うといった、とんでもなく都会的イメージであった。
さて、私は中学生になった。(昭和50年代)児島の町からはそれまでの煌びやかさは消えつつあったが、ヨシオカヤだけは当時の輝きを失ってはいなかった。いつから始まったのかは定かではないが、ヨシオカヤは毎年恒例、年2回開催の3割引きセールというのをやっていたのだが、このイベントが近づくと児島の住民はざわざわと色めき立つのである。
(児島には繊維祭りという着衣に関する物の大安売りをする有名な祭りがあるのだが、そこに出品されるのは、キズ物だったり、オフクロが勝手に買ってくる品物はワニが反対を向いていたり、ゴールデンベアーのJack Nicklausのスペルが微妙に違うバッタもんのブランドだったりするので、デパートに売っている全商品が3割引きになるヨシオカヤのそれとは全く期待度が違うのである)
「ヨシオカヤ3割引きセール」のすさまじい破壊力がお分かり頂けただろうか?
話を戻すが、[色めき立つ]←私も漏れずこのうちの一人となるのだが、3割引きセールの告知を広告で知ったとたんにソワソワし始め、セール前日ともなると心臓バクバクの期待度レッドゾーンとなる。こういう日は勉強するなどもってのほかで、「母方のお爺さんが危篤です」とウソをつき部活を休んで、「よもやお目当ての商品が売れてしまってはおるまいな?」と現物を確認に行かなければならない。
私の目当ての商品はズバリ!LACOSTEのポロシャツである。急ぎ足で学校を出ると、チャリンコで約5kmの道のりを「神様お願いですから、ラコステのポロシャツが売れていませんように・・・」そしてもうひとつ大切なことがある。「途中で不良に呼び止められませんように、不良に呼び止められませんように・・・」と念じながら、これでもかとペダルを踏み、ツールド・フランスのごとく目的地を目指すのである。ヨシオカヤに到着してみると、スポーツブランドコーナーで誰の目にも「俺が1番だ!」と誇示するかのように棚の一番上のマネキンに着せられているラコステの白いポロシャツを発見!1枚だけ特別に輝いて見えるそのスタイリッシュなシャツを見つけた中学2年生の少年は、瞳を潤ませながら「神様ありがとう・・・」と心の中でつぶやいたのである。値札を見ると1万円!当時の中学生には高価すぎて手が出ないが、「明日は待ちに待った3割引きだ。この日の為にとっておいた虎の子のお年玉を遣えばなんとかなるだろう」
気持ちは、はらたいらに全部である。決して篠沢教授でなく、ほぼ手中にするであろう安心のはらたいらである。私は、明日はあの白いポロシャツに袖を通しているであろう自分の姿を想像し、ニヤニヤしながら帰路についたのである。
そして決戦の日。ついに、私の母方の爺さんは死んだことになった。
「たしかお前、去年も母方のお爺さん死んだと言ってなかったか?」
と呼び止める先輩をうっちゃり、放課後のチャイムが鳴るやいなやロケットスタートで俺のポロシャツを迎えに行く。もちろん今日も神様にお願いは忘れない
「不良に出合いませんように、不良に出合いませんように・・・」
やっとの思いでヨシオカヤに着くが、既に店の中はおばちゃんたちでごった返している。おばちゃんの波をかき分け、どうにかスポーツブランドコーナーへ・・・!
「あった!まだ売れてなかった!」
「神様本当にありがとう・・・」
小さくガッツポーズを決め、白いポロシャツを指さしながら店員さんを呼ぶ。やっと手にする憧れのポロシャツ。
鼓動が早くなる・・・
さすがラコステ。その肌触りのなんと素晴らしいこと。ワニのマークも反対を向いていない。
「ヨシッ!」と値札を確認すると¥13,000-「ん?」
もう一度見た「・・・」
昨日は間違いなく¥10,000-だった物が1日で¥13,000-に値上がり?ヨシオカヤ3割引きは、先ず値札通りの現金で購入し、レシートを持って所定の場所へ行くと3割分をキャッシュバックしてくれるルールである。財布の中身を見ると1万円・・・そう、買えないのである。セールに参加する資格すらないことを悟った私の落胆と言ったら・・・orz 1万円という大金を持ったまま学校でドキドキ過ごした俺の気持ちはどうなる?
今日死んでしまった母方のお爺さんはどうなる?
(この後、数回に渡って死んだことになるのだがw)
「大人のやることって、大人のやることって・・・」
こうして私は大人の階段を1歩のぼったのである。昭和と共に生き、私に初めて大人の世界を教えてくれたデパート「ヨシオカヤ百貨店」お店は無くなっても、私の記憶の中で、デパート・オブ・ザ・キングはあなたです。今までありがとう!長い間お疲れ様でした。。。
最後に私の拙い文章にお付き合いくださった方
SpecialThanks☆

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