[東京荒川][鉄道] 尾久駅,尾久車両庫

 







伊集院光: 古屋君の記憶〜『伊集院光・深夜の馬鹿力』

[東京荒川][鉄道] 尾久駅,古屋君の記憶〜『伊集院光・深夜の馬鹿力』

TBSラジオJUNK/『伊集院光・深夜の馬鹿力』

2023.8.29(月)     

■古屋君と尾久駅

…10年位前にやってる昔の『深夜の馬鹿力』聴いてた人なら憶えてるかもだけど,小中が一緒で,高校は別だったけど,仲良かった大野君っていう友達がいて。もう今は孫もいるおじいちゃんですけど,その大野君とバイクの事で再交流が始まって,頻繁に会う時期と,あんまり会わない時期が交互にあって,でも久々に会ったりすると,昨日の続きみたく話ができるだけ感じの,僕の中では割りと唯一の友達みたいな感じですけど。そいつと話した話で『深夜の馬鹿力』に合った話でいうと,「10年前ぐらいにクラス会に行った」って話を当時の番組でしてて。でそのクラス会のノリが,俺があんまり好きじゃないノリで。クラス会に来るヤツなんてのは,当時の思い出が楽しかったヤツか,ある程度脳内加工したりとか,いろんなことがあって許せるようになったヤツらがマァ来るところですよね。俺は,高校の同窓会は行くかどうかなんだけど,中学の同窓会は,マァ中学時代はそこそこ大野君とかと一緒で,大野君とかがいてくれたおかげで,そんなに悪くない暮らしもしてたから,出る事がある。

んで,中学のクラスには,古屋君っていう超貧乏で,クラスで浮いてた友達がいた。当時の1億総中流みたいな時代に,僕たちが生まれ育った荒川区は,その時期にすごく裕福な区ではないけれど,それなりにみんな中流家庭の時代に,貧乏で,家族4人で3畳のアパートに住んでた。その3畳のアパートが和室なんだけど,畳がダメになっちゃったのに,替えるお金がないから,畳を剥がした床の上ででご飯食べてたようなお家で。お金のかかる学校イベントは辞退するようなお家の子で。頭は割といいヤツだったんだけど,やっぱりクラスとかでイジメとイジられるの中間位の孤立してた子だった。

だから,古屋君はそこにいい思い出がないから,クラス会には当然来ないんだけど,クラス会のノリって,あるあるとか,あんなことあったよな〜の中に,そこにいない彼の思い出が入ってきて。しかもちょっと当時のノリの彼イジリみたいな話になってく。「アイツが貧乏だった…」みたいな。

俺がそいつを好きだったとこが1個あって。浮いてるヤツ特有の,距離の縮め方の下手さはあるから,正直に言えば,俺もその学校の中ではいつイジられられる側に行くかもわからない事もあるから,強く彼の味方をすることはしないっていうタイプ,位置。んで彼はお金がないけどできる趣味っていう事で,近くの尾久駅(おくえき,おぐえき)っていう,割りと乗降者数の少ない駅があるんだけど,その駅にいつも暇さえあればいて,当時はSuicaじゃないから,乗客は「○○駅から○○円区間」って書いてある切符を,尾久駅で降りる時に捨てるんだけど,その使用済切符をきちんと収納箱に入れるとかができてないから,風に舞ったりとかして散乱してる。古屋君はそれを拾ってた。「今日はこんな珍しい駅から来た」みたいな切符を集めてた鉄道マニアなんだけど,コイツすごいなと思ったのは,「使えない使用済切符を,拾ってどうしたんだよ?」って俺が訊くと「なんか自分の知らない駅の事を考えたりとかできる」「すごい遠くから尾久まで来た人がいるんだっていうのを考えるのがすごい面白いんだぜ」って言うわけ。古屋君は勉強ができたから,自分が知らない駅の事を考えたりとかしたたらしい。んで「こういう珍しい駅の切符あった」って俺にくれるんだけど,その時に思ったのは…これは俺にもそういう所あるから分かるんだけど,距離の縮め方が下手なんだよ。田中くん/田中/田中さん/田中健君/健ちゃん/健…みたいなランクがあんじゃん。それを,今まで喋ったことないのに「健さァ…」ってなっちゃうのがうっとおしかったりとか,そこまで一気に行っちゃうと逆にクラスの知ってるヤツ達とかは「あそこは仲良いんだ」みたいにされるのもちょっと嫌だった。そんなのを思い出しながら,なんかそこをただの笑い話,からかい話してるグループと,あんま仲良くなりたくない感じで距離を取りつつ,クラス会に出てて。したら皆が「アイツ,ヘンな切符くれたりしたよな…」とかっていう話になるんで,俺として「あのヘンな切符に関しては,結構俺の好きな話があってさ…」みたいな話を言う間もなく「アイツ,ヘンだよな~」になっちゃうから,いい加減大人になった俺もなかなか言えないでいた所に,遅れて入ってきた大野君が「何の話ししてんの?」「古屋がくれたヘンな切符」「アァ俺今でも持ってる」って,30年間大野君が持ってる切符。大野駅って書いてある切符。大野駅から尾久駅までの切符を持ってる。俺は喋る商売やってるし,その時点は10年前だし。なのに,なんかその上手に返す事も出来ず,未だに連中とのよそよそしさとか,タレントになって調子乗ってんじゃねー的な感じとか「家族がファンだからサインしてくれ」「写真撮ってくれ」っていうのに,苦笑いをしながら応える感じでいたりする関係上,うまく言えなかった所に,大野君が当たり前のようにその話を始めて。「アイツが言うんだよ,その大野っていう駅があって…」って。大野君はちょっとおバカだから「この切符で大野駅行けんの?」ってなっちゃう。それはできないんだけど「なんかすごくない?"自分と同じ名前の駅がどっかにあって,そこから尾久駅にその人が来た証拠なんだよ"みたいなこと言われて"すげー"と思ってずっと取っておいた」って。

■大野駅

その話の後日談。一昨日の土曜日。24時間テレビがあった土曜日に,空いてる暇の最後の方だから大野君の家に行った。んで大野君とバイク治す計画とか,今乗ってる200ccのヤツをちょっと治す話ししてて。元々大野君が「俺に免許取ったほうがいいよ」っていう話をして,俺に焼き付けたっていうのは,その中年同士でバイクを乗りに行く相手も欲しいっていう,アイツの目論見もあったんだろうけど「そろそろ暑さも終わるし,ずっとバイク乗ってネェ,どっか行きたい所ある?」って話になって「あの古屋の話の大野駅道にバイクで行きたい」「10年前に大野駅の話をした時から,大野駅の話してないんだけど,大野駅に行きたいんだよ」って。古屋君から大野駅の切符をもらって,遠くから来た人の切符の楽しみ方を聞いてから,大野駅ってどういう駅なんだろう?とずっと考えてたと。ずっと考える遊びをしてて,10年前に俺に会った時に「大野駅ってどこなんだろうな?」っていう話をされて,俺が「そんなの,調べれば出てくるだろ」って,調べれば具体的に何があるか,答え合わせなんかすぐ出来るよって話をなんとなくした記憶はある。んで10年前にクラス会から帰ってから,大野駅がどこにあるのかって事を調べたと。そしたら,大野駅は,福島県の福島原発のかなり近くで,東日本大震災後に侵入禁止区域になってた。お子さんが聴いてない事祈るけど,大野君おじいちゃんは,大野君お父さんはバカなんだよ。なんかその大野のいいところで,古屋君の影響で,なんとなくその大野駅を想像している。…もしかしたら駅長も大野で,町民全部が大野なんじゃないか?って(笑) 大野に対してすごい優しい街なんじゃないか? 商店街のお店はお名前確認で大野ってなると「おめでとうございます,87%引きです」とか(笑)の大野帝国だと思った時期もあり。その後に1回もきちんと調べないままずっと来てて,10年前にクラス会から帰ってから調べた時に「ェ?あの津波でやられた場所?」ってなって。しかもその原子力発電所の影響でなかなかそこに住んでた人も近寄れないような状態になっちゃったってメチャメチャショックうけてる。やっぱおバカなんだよ。「お前の想像してた大野駅ではないからね」って俺は言ってんのにさ。原発事故で消えた大野神輿も,大野祭りもお神輿もないからっていうことだったけど,ずっと想像してたところがそういうことになってんだ…ってことに結構ショックを受けて,何年か過ごしてきたんだけど,「今年の春かなんかに,その大野市の帰宅困難地域みたいなのが解除されたから行ってみたいんだ」って「そうなんだ」ってことになるんだけど。なんか,それが大野君です。それが俺の中で,えーとおバカなんだけどいいヤツなんだけど,ちょっと頑固すぎて,娘とかは「また始まったお父さん…」ってなりながらも,なんか最後のところで「お前の親父はいいヤツでなー」ってなっちゃう大野くんの話。


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