日本人の生活様式を複雑だ。
和洋折衷の家に住み、和洋混合の生活をしている。とくに都会の給料生活者等の生活はどう考えても儚いものである。サンダルを履いたり、素足でいたり、出勤前には忙しい家事に疲れた奥さんが靴を磨き、主人はそれを履いて出かける。その靴も電車の中で踏まれて泥だらけになってしまう。事務所は洋風だから汚れた靴は見苦しい。安い給料では一回20円の靴磨き料も惜しいのは当然だろう。何足も持っていれば、今日の靴は明日は休ませることができるが、濡れ手どろんこになったのは翌朝また履いて出るのだから靴もかわいそうだ。家帰ればまた下駄の生活になる。戦後、日本へ沢山来た外国人が、日本の履物に興味を持って使っているのを見かける。こんな便利なものを使わなくては損だと言って兵舎の中を下駄履きで歩いて叱られたという話を聞いたが、秋物を通して今の世相を観察するのも面白いだろう。
(岩波写真文庫・はきもの 1952年 )
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東京都23区の人々を対象とした昭和27年末から昭和28年初めの履物の使用状況。大人は満14歳以上。上は通学通勤者の革靴使用率。
男性の84.5パーセント女性の60.5パーセントが使用している。
下の図は、一人当たりの革靴所有数。東京でもわずか2足前後。
―はきもの(岩波写真文庫 1952年 )
1951年
北原白秋替え歌 抒情歌集
[謎の鳥]
とらよとすればその手から
物価は空へとんでゆく
追っても追っても追いきれず
うちは火の車 給料取り
♪♪
[こんど生まれたら]
こんど生まれたら ドラム缶しょっておいで
アルコオル良いもの たらふく呑んで
そこでメチルで またもや死んで
可愛い妻子をおきざりに
♪♪
[さすらいの歌]
行こか戻ろか ヤミ市の中を
物価インフレ はて知らず
酉にカバヤキ 東にお酒
金が要ります 新円が
♪♪
[城ヶ島の雨]
飴があるある 問屋の店に
子供泣かせの飴がある
飴は甘いが給料は辛い
それ故 財布のすすり泣き
飴はあるある 子は泣きじゃくる
ままよ 空けつ 眼がかすむ
♪♪
[酒場の歌]
ダンスしましょか 「りべらる」買おか
ラランララン ラランララン
赤い旗でもふりましょうか
♪♪
[タバコのめのめ]
タバコのめのめ 配給じゃ足らぬ
どうせこの世はヤミタバコ
煙よ 煙よ ただ煙
小遣い いっさい ただ煙
♪♪
―玉石集(アサヒグラフ/単行本,1951年刊)
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